しかし、「どのような内容だったか」と問われて、すぐに思い出せる方は少ないんじゃないでしょうか?
実際私も、「ドンキホーテ」のお話とごっちゃになっていたりして、思い出せませんでした

ですので、ネットで調べてみて、さらに本を購入し読み返してみることにしました。
この本です。
イワンのばか (岩波少年文庫)
これは、ロシアの文豪レフ・トルストイが晩年に書いた、子供向け読み物でした。
しかし、今読み返してみると、これはまさに現代社会を象徴しているかのような内容であるし、またトルストイの”予言書”でもあるなと感じました。
以下に、話の筋を簡単に書いてみます。
『むかし、ある国の、あるところに、裕福な百姓が住んでいましたが、その百姓には3人の息子と1人の娘がありました。
長男は、権力と軍事力にとらわれたセミョーン、
次男は、お金儲けと財力にとらわれたタラース、
三男が、”ばか”なために百姓になるしかなかったイワン、
そして、聾唖者である妹です。
長男のセミョーンは軍人で国のために戦争に行き、次男のほてい腹のタラースは商売のために町に行きました。
ばかのイワンは 聾唖者の妹と家に残って身を粉にして働きました。
兄達がお金が足りなくなり、家に来て財産を分けてくれといったら、父親は「この家のものはイワンが働いたものばかりだ、お前達は、家のために何もしなかったじゃないか、そんなことしたらイワンが気を悪くするだろう」と断ると兄達は「イワンはばかだから、なんで財産がいるものか」と言います。
それでも 父親がイワンに聞くと「なぁに、かまうもんですか、好きなだけあげてください」と言う無執着振りです

ですので、兄弟の仲が険悪になることは無かったのでした

それを見て腹を立てた悪魔達が相談し、あの手この手を使い、この三兄弟を仲違いさせようとしますが、イワンは一心不乱に畑仕事をして、悪魔がいくら邪魔してもひたすら働き通すもので、悪魔も手に負えません

しまいには、その信仰心によって退治されてしまいます

そうこうするうちに、三兄弟はそれぞれ一国の王になりますが、兄達は悪魔の親方の、お金や軍隊やこの世の欲望を刺激するものを駆使した攻撃により、破滅していきますが、イワンだけは負かすことができません。
そして、悪魔の親方が化けた紳士は、イワンやその民達に「頭を使って働く方法がある。頭で働く方法は、”ばか”が手で汗水たらして働くより100倍も難しい、時には頭が割れそうになる程だ」と言い、「あなた方”ばか”をを見ていると、可哀相に思うのでこれから頭で働く方法を教えてあげよう」と言います。
イワンは驚いて「教えてくれ、いつか手と背で働けなくなったときのために、頭でその代わりが出来るように」と頼みました。
しかし、紳士の姿をした悪魔はやぐらの上に立って一日中、どうしたら汗水たらして働かないで生きていけるかという方法をただ口でしゃべっているに過ぎなかったので、民達は理解できず、そのうちめいめいの仕事に散っていってしまいました。
紳士は何日もやぐらの上でしゃべり続けましたが、ばか達は、紳士にパンを持っていってやることも気が付きませんでした。
悪魔は空腹のために弱りよろめいては、しきりに柱に頭を打ちつけ、イワンが来たとき、つまづいて倒れ、梯子を一段一段、頭で打ちつけながら 大変な音を立てながら落ちてしまいました。
「なるほど、頭を割れるほど考えるといっていたが、本当だ」とイワンが感心していると、こうして悪魔は、地面にすごい勢いで頭から突っ込んで裂けた地面に落ち込んでしまい、後にはぽつんと穴が一つ残っただけでした。
その後、イワンは自分の国で兄達もやしなってあげたそうです。
しかし、その国には一つだけしきたりがありました。
それは「手にまめのある者は食事の席につかせてもらえるが、まめの無い者は、人の残りものを食べなければならない」ということでした。』
この物語はまさに、1885年にロシアでトルストイが経験し考えた、資本主義経済への警告ともいえるでしょう。
偉い学者が、絶対損することのない”金融工学”とやらを生み出し、挙句の果てにリーマンショック等、現在の金融危機・ソブリン危機を生み出した構図と似ていないでしょうか?
今日の断末魔の様相を呈した資本主義経済を見るにつけ、イワンの”ばか”こそ、もっとも”かしこい”人だったのかもしれません

哲学者ソクラテスも「無知の知」と言っていますが、これは「自分自身が無知であることを知っている人間は、自分自身が無知であることを知らない人間より賢い」という意味です。
現代人は、ちょっと奢り高ぶってしまったのかも知れませんね・・・。
PS.この本は、ジブリの宮崎駿監督も推薦されているようです。
http://www.bs4.jp/ghibli_hondana/onair/09.html

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